出版社内容情報
昔からクジラと日本人は深い関係にあった.縄文の遺跡からは骨が出土し,伝統行事の中にもしばしば登場する.クジラの生態,捕鯨の歴史,商業捕鯨をめぐる資源論争などにも言及しながら描くクジラと日本人の歴史.
内容説明
昔からクジラと日本人は深い関係にあった。縄文時代の三内丸山遺跡からは骨が出土していて、漂着したり座礁したクジラを捕っていたことがわかる。日本近海では現在生息する全八二種のうち三七種が見られるという。クジラの生態、世界の捕鯨の歴史、商業捕鯨の是非をめぐる資源論争などにも言及しながら描くクジラと日本人の歴史。
目次
1 クジラとは何か
2 日本人と捕鯨
3 日本における捕鯨文化
4 クジラ資源の管理
5 世界と日本のクジラの現状
6 クジラ問題の展望
著者等紹介
大隅清治[オオスミセイジ]
1930年群馬県に生まれる。1958年東京大学大学院生物学系研究科博士課程修了。専攻は鯨類資源生物学。現在、財団法人日本鯨類研究所理事長
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ともゑ
11
捕鯨賛成派の立場から書かれた本。鯨の生物学的な特徴から日本の捕鯨の歴史と文化を解説する前半を読んだ時点で、反捕鯨国から非難される筋合いはないとはっきりと理解できた。個体数も保てているのであれば、魚や牛や豚を食料とする事となんら変わりは無いではないか。むしろ何故そこまでして反対するのかが疑問。政治的なものもあるのだろうがなんだか宗教戦争じみたものを感じた。感情論になってしまうが余す所なく食べて感謝する、という感覚が日本にはあるのに必要な所以外は捨てる欧米に食べるなと言われてもやっぱり納得いかない。2016/07/30
スパイク
10
今年3月末、、国際司法裁判所は、日本の調査捕鯨について(現在のやり方では)認められないとする判決を言い渡した。ナショナリズムが一部で盛り上がるなかで、私も日本人として、この問題についてどう考えるの?という意見をもっておくことも必要かなと思って読んだ。恵比寿=海神の信仰など、知ることができてよかった。結局、自然の恵みを粗末にしないということになるのだろうが、捕鯨支持国も反捕鯨国も、そのこととは別の次元での争いになっており、全くもって政治的な問題であることはわかった。2014/05/01
ツナ
5
日本が科学的根拠に基づいて資源を利用すると主張しても、捕鯨=鯨油利用という思考である反捕鯨国には、鯨資源利用の必要性が伝わっていないのではないか。だから堂々と感情論を押し付け続ける。鯨資源の増加による漁業被害や、クロミンククジラの台頭によるシロナガスクジラの資源減少など、鯨肉を利用しない彼らにも関係する危機を理解してもらう必要がある。もしくは、彼らはそれを理解した上で、畜肉輸出による利益、人種差別を理由に反対しているのか?だとすれば、そのような科学よりも政治を優先した自国至上主義を掲げるのはやめて欲しい。2020/02/02
スズツキ
4
日本のクジラ調査における第一人者が語るクジラ論。その生態に始まり、人類との交流から国ごとの文化的受容の差異、政治問題など喫緊の話題が満載。2017/03/19
でんすけ
2
クジラの生態から生物資源としての用途、商業捕鯨、捕鯨に関する論争まで、読み物として幅が広い。反捕鯨の大元の論拠は、鯨油だけ採ってあとは捨ててしまう欧米型の乱獲による資源の減少であって、そもそも食用、素材としてクジラ資源を余すところなく活用する日本型の捕鯨に対しては的はずれである。クジラの知能が高いからという批判も、実は牛や豚程度だそう。この辺の反捕鯨側のデマゴギーに対する著者の憤りを感じつつ読む。資源としての用途や日の鯨文化の方を興味深く読んだ。2022/11/22