出版社内容情報
クローンで増えることさえできる植物.彼らは考えることをしないし,感情も持たない.しかしその感覚は鋭く,生のプログラムも精妙に組まれている.その知られざる生の営みを紹介し,人をもふくむ生命の本質を説く.
内容説明
「人間は考える葦である」といわれる。それでは「葦」に代表される植物とは、どのような生き物なのだろうか。彼らは考えることをしないし、感情も持たない。けれどもその感覚は鋭く、生活のプログラムは精妙に組まれており、クローンで増える能力さえある。これら植物たちの知られざる生の営みをつぶさに紹介し、生命の本質を説く。
目次
1 存在(個のありかた;性の意味;融通無碍な体―全能性 ほか)
2 戦略(天へ向かって―「つる植物」の生き方;利用できるものは利用する―着生・寄生・腐生;入居者募集―アリ植物とダニ植物 ほか)
3 適応(ヒマラヤの高みで;水の中で生きる)
著者等紹介
塚谷裕一[ツカヤヒロカズ]
1964年鎌倉市に生まれる。1993年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、東京大学分子細胞生物学研究所を経て、現在、岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所および統合バイオサイエンスセンター助教授、総合研究大学院大学助教授(併任)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
にがうり
12
受講中の放送大学「植物と科学」の副読本として。岩波新書でも読みやすい。植物にこころはなくともおもしろい! 書名で検索したら出てこず、名著なのになぜ? と思ったら、旧アマゾン和書の検索で出てきました。知らない間にシステムが変わっていた・・2022/11/22
あにこ
8
「植物に心はありやなしや?」というのが主題かと期待して読み始めたが、中身は植物の特性と生き方を紹介する本だった。■タイトルに関して端的に言うと、一般的に我々が「心」と期待するところのものは植物にはない、というのが植物学者としての著者の見解である。「生きている」ということは直ちに「心がある」というのではない。植物には感情が一切ないが、生きてはいる。生きたい、生きようという思いはない。ただ適当な環境下では繁殖するようになっている。この「なっている」というのがちとひっかかる。生命に対する謎と興味が深まった一冊。2019/10/01
大道寺
7
いいタイトルだと思う。「サボテンに音楽を聞かせると、サボテンが喜んで花を咲かせる!」とか思っている輩を釣れるからだ。まるで蜂をおびき寄せるオフリスの花のように。植物にも人間のような心があると信じている人たちに対する啓蒙書としても、単に植物学への入門としても、きっと良い本なのではないか。文学や宗教の表現として植物の気持ちを語るのはありだと思うが、自然科学としては、語るのはなかなか難しいのではないか。汎心論(汎経験論)はまた違った話であるし。(続く)2011/12/14
田中一郎
6
『哲学入門(戸田山 和久)』で紹介されてたので読んでみた。植物に関する雑学集といった感じ。普通に面白かった。桜の色が変化する理由とか、楠の葉にあるダニの部屋とか、ちょっと散歩して来ようかなとか思わせてくれる内容。ただ、NHKとかの番組と違うのは、「植物の知恵」を褒め称えるような説明ではなく、「たまたま生じた変化が自然選択によって生き残る」という進化論に則った説明をしている点。デネットはアナバチで説明してたけど、こういうのも好きそう。2020/07/14
6ちゃん
6
「生き物」として植物が全く思い浮かばないすべての人に読ませたい良書。常々生命に関する書物には「貪欲さ」を感じるが、動物の世界では見えない、今ある環境にしぶとく居座る植物だからこそ見えてくる底知れない「戦い」を本書に見出した。感情を持たず「個」という扱いすら捨てている植物だが、著者の絶妙な解説により、その生存戦略に熱いものを感じざるを得なくなる。「こころ」とタイトルにあるが、それは生き方のスタイル、心構え、ということを指しているのか。生命を知るには絶好の入門書だと思う。2017/03/23