岩波新書
自白の心理学

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  • サイズ 新書判/ページ数 208p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784004307211
  • NDC分類 327.62
  • Cコード C0211

出版社内容情報

身に覚えのない犯罪を自白する.そんなことはありうるのか.自白が大きな争点となった事件をとりあげて,心理学の立場からその取調べ過程を細かに分析し,「自分に不利なうそ」をつくに至る心のメカニズムを検証する.

内容説明

身に覚えのない犯罪を自白する。そんなことはありうるのだろうか?しかもいったんなされた自白は、司法の場で限りない重みを持つ。心理学の立場から冤罪事件に関わってきた著者が、甲山事件、仁保事件など、自白が大きな争点になった事件の取調べ過程を細かに分析し、「自分に不利なうそ」をつくに至る心のメカニズムを検証する。

目次

序 自白と冤罪(冤罪は遠い世界の話ではない;冤罪のひろがり ほか)
第1章 なぜ不利なうそをつくのか(宇和島事件と自白;うそを引き寄せる磁場 ほか)
第2章 うそに落ちていく心理(甲山事件の出発点;自白へ向かって ほか)
第3章 犯行ストーリーを展開していく心理(仁保事件;録音テープと事件 ほか)
第4章 自白調書を読み解く(袴田事件;自白調書を読む(1)うそ分析(変遷分析) ほか)

著者等紹介

浜田寿美男[ハマダスミオ]
1947年香川県に生まれる。1976年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、花園大学社会福祉学部教授。専攻は発達心理学および法心理学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

山口透析鉄

29
浜田氏の新書を読むのはこれで2冊目で、これも市の図書館本で読みました。 虚偽の自白が如何にして成立するのか、宇和島事件・甲山事件・仁保事件・袴田事件といった著名な事例をもとにその詳細を解説されていて、秘密の暴露は真犯人にしかできないのに対し、著者のいう「無知の暴露」が冤罪立証のキーポイントになることが分かるようになっています。 日本の捜査機関と司法の無謬性というのは欺瞞でしかないでしょうが、無謬性にとらわれて捜査・尋問の全面公開性を確保しない限り、冤罪は消えないでしょう。司法制度の後進性が見えます。2023/06/20

skunk_c

29
18年前の本、見逃していた。近作がより理論的だとすると、本書は実証的。4つの事件の自白事例を通して自白が「作られて」いく過程を詳細に検証している。ここでも問題は取り調べる警察官の「絶対犯人だと思って聴取せよ。ひょっとして違うのではと思ってはならない」といった考えで、警察内のテキストにそのように書いてあるとのこと。起訴率を上げたいのだろうが、いくら断片的な証拠を繋ぎたいからといって、無罪推定をかなぐり捨てるのは論外ではないか。23日(欧米標準は3日)の拘留期間も悪影響大だ。近作と併読してさらに深まった感じ。2018/09/16

リキヨシオ

23
冤罪が生まれる原因に取り調べ時の「ウソの自白」がある。何故無実なのに自分を追い込む自白をしてしまうのか?過去の冤罪ケースと心理学を交えて述べた1冊。多人数による四六時中監視された環境での人格否定の取り調べ、否認しようが相手は聞く耳を持ってくれない、記憶の混乱など異常な精神状態に陥り、諦めの感情から自白してしまうという。うその自白には3つの型があり・犯人の為の身代わり自白・厳しい取り調べに自分の記憶に自信を失い自分が犯人と思いこむ自己同一型の自白・相手の取り調べの圧力に耐えきれなくなる迎合型の自白がある。2015/11/07

tolucky1962

11
冤罪を心理学から語る。人は言葉の世界に生き,うその世界も成立する。確信は証拠に比例しない。対立時どちらが折れるかは事実より場の力関係で決す。警察の厳しい取り調べ。裸で身体検査され常時監視され考える力はマヒし追い込まれる。今の苦痛が重ければ将来の苦痛に目つむつむるのは自然な姿。自白後犯罪の筋書きをなぜ示せるか。なんとか供述しようとする被疑者と取調官の合作。警察には冤罪率は小さい。長い長い裁判も問題。少しは改善されているかもしれないが,本人にとっては一生の話。先進国を参照にしながら改善していく必要があろう。 2019/11/22

CTC

7
01年岩波新書。著者は奈良女大名誉教授、本書収録の甲山事件や袴田事件では、被告側証人としても事件にかかわった。 任侠映画でも見ようものなら、拷問にはよう耐えんわ、と思ってしまうが、ケーサツの取調べにウソの自白などするわけがない!と思っていた。甲山事件は74年、袴田事件は66年であり、多少無理な取調べもあったが(後者は1日16時間、夜も泥酔者の近くに拘留して寝かさないなど)、被疑者の混乱を突いて「空白の15分」を追及したり、罪を認めるまで際限なく続くと思わせる手管など、もしかして自分だってと思ってしまう。2019/07/22

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