出版社内容情報
非能率な日本の英語教育.その改革には発想の根本的転換が必要である.英語を義務教育から外す,国際理解はやめる,など意表をつく大胆な改革案を提示して,発信型の国際英語を身につけた人材を育てるための途を指し示す.
内容説明
国際化時代にもかかわらず低い日本人の英語力。非能率な英語教育を改善して英語ができる人材を育てるためには、発想の根本的転換が必要だ。英語を義務教育から外す、「国際理解」はやめる、教材は日本を扱ったものだけにする、など意表をつく大胆な改革案を提示して、発信型の国際英語が身につく教育システムづくりを呼びかける。
目次
1章 外国語に憧れる日本人
2章 何を目的に外国語を学ぶか―外国語学習の類型論
3章 英語の三変種―どの英語を学ぶべきか
4章 外国語教育をどう改革するか―その理念と方向
5章 英語が身につく授業とは
6章 英会話の学習にひそむ問題
7章 日本式英語の必要
8章 英語で日本文化の発信を
補章 大学語学教育の改革―慶応義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)での場合
著者等紹介
鈴木孝夫[スズキタカオ]
1926年東京に生まれる。1950年慶応義塾大学文学部卒業。専攻は言語社会学。現在、慶応義塾大学名誉教授
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
56
問いそのものが現代的意義を失っていない。逆に言うと、それだけ日本の英語教育は迷走してきたのだ。日本語は、英語とはまったく違う系統に属する言語。日本人の宗教や世界観、風俗習慣をも含む文化までも、欧米人のそれとは非常に異なるものですから、互いの言語を学ぶ際の苦労と、日本人が彼らの言語に習熟するときに経験する困難は比較にならない(5頁)。日本人の外国語を学ぶ主な目的、究極のねらいは、これまでいつも自分の国にないもの、欠けているものを外国から取り入れ、自分の国を良くしたい、2017/05/09
佐島楓
23
言語の構造的な差異の話ではなく、教育論。日本のことを発信していける人材を育てる、習得には日本の英字新聞を読むことが有効など、より実践的な内容だった。英語になるべく毎日触れるよう心がけているので、外国人に対する態度など勉強になったと思う。学校と名のつく場所を離れて久しいが、現在の英語教育はどうなっているんだろう。2011/09/07
那由田 忠
20
流し読み。非常に面白い。言われたことはもっともなこと。日本人全てが英語をできなくてよい。英米文化を学ぶのではなく、日本文化を英語で発信することを学ぶべきだ。国際英語、世界の人々との交流のために必要なのだから、日本式英語でよい。アメリカ人に英語を学んだりする必要もない。国際理解は別な形でやれ。朝起きてから寝るまでに使う英語、日常的に必要なことから学び始めるべきだ。いまの4技能重視はやはりずれている。しかし、鈴木さんの主張が広がるのは難しい。困ったもんだ。2018/08/29
sabosashi
18
この著者は複眼的思考に恵まれた言語学者だと思う。 このテーマについては類書が山ほどあるはずで、わたし自身にも言いたいことはたしかにある。 ところが本書は、ニホン人にとって外国とは何か、外国語とは何か、というところから始めている。 つまり、中国とは、漢文とは何か、ということで、さらには、近代ニホンにとって英語は何か、ということを解き明かしている。 さらには、ニホン人にとって英語は必須であるか、つまり他に優先されるべきものはないのか。 この国際化社会において、英語が果たす役割は何か。 2019/12/18
Nobu A
15
鈴木孝夫著書初読。1999年出版当時読んでいたら感想が違ったかも。他律型文明から自律型文明へと転換した日本は中国のような発信型英語教育を提唱。読んでいくと個人的体験起点だと分かる。頷く箇所も多いが疑問も幾つか。最良の解決策が英語を必須にせず、英語による講義で自主的語学学習に仕向けるとか。それは海外の著名大学への学生流出に繋がるのでは。他にもJリーグチーム名称を和語・漢語に変更提案。逆に外国人力士の英語名称に何を想起するだろうか。スポーツ発祥国の視点欠落。広く教育論にまで及び焦点が定まらないような読後感。2020/05/31