出版社内容情報
ぼくのマンガは大阪大空襲と8月15日が原点になっている.-いじめられっ子時代,父母,先生,友人たち,マンガの技法やこめたメッセージを語る.不滅のマンガ家が残した講演記録を編集.ハートフルな肉声がいま甦る.
内容説明
ぼくのマンガは大阪大空襲と八月一五日が原点だ―子供時代、父母、先生、友人との触れあい、作品にこめた熱いメッセージを語る。マンガを読み聞かせてくれた母、作文する楽しさを教えてくれた先生、絶体絶命の苦境で助けてくれた友。彼の創作を支えたものは何か。不滅のマンガ家が遺した講演記録を編集、ハートフルな肉声がいま甦る。
目次
1 マンガを描きはじめた頃
2 すばらしい先生たちとの出会い
3 ぼくの戦争体験
4 「生命の尊厳」がぼくのテーマ
5 アニメーションをつくる
6 子供は真剣なメッセージを待っている―大人たちへ
7 人間性こそ大切―若い人たちへ
「ゴッドファーザーの息子」
著者等紹介
手塚治虫[テズカオサム]
1928年大阪府生まれ。1951年大阪大学附属医学専門部卒業。1946年「マアチャンの日記帳」でデビュー。以後、マンガ、アニメーション作品をつぎつぎに発表。1989年死去
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
122
岩波新書に手塚治虫のエッセイ(講演録)があるとは知りませんでした。私はそれこそ鉄腕アトム世代なので懐かしい気持ちいっぱいで読みました。講演録をうまくしゃべり言葉で書かれているのでわかりやすく先生のマンガにかける情熱や若い人への気持ちを知ることができました。また読んだことのないご自分の小さい頃の「ゴッドファーザーの息子」という掌編が収められているのは楽しめました。2021/10/25
zero1
63
【神様】と言われた手塚(89年没)の生い立ちから哲学。次の世代に何を、どう伝えるか。本人だけでなく妹や学友、関係者の証言を交えて描く。✴️背が小さく眼鏡の手塚は少年時代いじめられていた。絵を描くという【特殊技能】に【綴り方教育】を実行した恩師の存在と戦争。医学生時代に生命の尊厳。母の一言でマンガの道を選択。ディズニーの影響とアニメへの想い。✴️社会と教育については、悲観的な子どもが多いことを懸念。【人間らしさ】はどこに?講演録を書籍化(97年初版)。名言多数(後述)。2023/06/07
ホークス
50
1997年刊。手塚治虫の死後に、晩年の幾つかの講演、妹さんや幼馴染の寄稿をまとめたもの。私の親と同世代で、改めて恐ろしい時代をよく生き延びられたと思う。強い主張がある一方で、「こうするしかなかった」という苦い告白もある。素晴らしい言葉と、さすがに古過ぎると感じる言葉が混じる。本人が『火の鳥』の登場人物のようだ。私は『どろろ』が好きで繰り返し読んでいた。周囲に溶け込めない苦しさを、この残酷な話に投影したらしい。人間はケダモノだが、時に一片の美しさを見せる。手塚治虫はその事をよく知っていた。2022/07/07
おさむ
50
敬愛する手塚先生の私たちへのメッセージは、シンプルかつピュア。自分が描いてきたテーマは、生命の尊厳。大人は子供たちに生きることの大切さを教えなくてはならない。一方で、赤ちゃんは未来人であり、自分たちより偉いという認識が必要。文明よりも大事なのは文化。世界の人々と付き合うには謙虚に、控えめに、人間らしくあること。虫プロが経営危機に陥った時にアップリカの葛西社長が支えたことや、ヒョウタンツギは妹さんの落書きがネタ元ということ、鉄腕アトムはミッキーマウスの影響を受けたことなど初耳エピソードも満載でした。2017/04/01
Willie the Wildcat
50
時代の齎す著者の信念。母が、親友が、そして恩師が、著者の想いを育む。著者が、自身に対して自信を持つ過程に共感。この過程も、現代社会への問題提起の源泉なのかもしれない。問題提起の観点では、TVコマーシャル弊害への視座が、特に印象的。氏が亡くなって25年強。変化は如何に?それにしてもミッキーの”秘密”も興味深かったなぁ。蛇足だが、『ガジャボイ頭』ってどんな頭???2014/04/24