出版社内容情報
1492年にスペインを追われたユダヤ人の足跡をたどる,モロッコ,エジプト,イスラエルへの旅は,追放と交通の路であった地中海の500年を歩くことであった.20世紀の悲劇にも通じる,ユダヤ人のながい離散の歴史が,旅の発見と重ねられて様々に呼び起こされ,思想史,文化史の隠れた系譜とともに,ヨーロッパ近代が再検討される.
内容説明
一四九二年にスペインを追われたユダヤ人の足跡をたどる、モロッコ、エジプト、イスラエルへの旅は、追放と交通の路であった地中海の五百年を歩くことであった。二十世紀の悲劇にも通じる、ユダヤ人のながい離散の歴史が、旅の発見と重ねられて様々に呼び起こされ、思想史、文化史の隠れた系譜とともに、ヨーロッパ近代が再検討される。
目次
序章 追放の神話
第1章 マラケシュ―マラーノの墓
第2章 カイロ―「流謫」の意味を求めて
第3章 エルサレム―シェキーナの流謫
第4章 サフェド―アリの青い墓
第5章 ヤッフォ―神の収縮か器の修復か
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
196
ユダヤ人に縁の深いマラケシュ、カイロ、エルサレム、サフェド、ヤッフォへの紀行。旅のきっかけは、カバラ研究者ショーレムの原点となったルリアの「器の破壊」理論(世界創造に先立つ神の内部への撤退と、神の器の修復を託された離散ユダヤ人)だそうだ。歴史、宗教、哲学を織り混ぜた記述は錯綜し、ついていけない所も多かったが、土地を追われた人々の苦しみは確かに伝わってくる。これは現代の難民、差別、いじめ問題に通じるかも、と読み進めるうち、ほんの一瞬だが、流浪する人々が見た光…器の破片に囚われた聖なる光を見たような気もした。2021/10/31
takao
3
ふむ2024/04/24
トントン
3
「ドナ・ドナ」(仔牛の歌)の語源が「アドナイ」(わが主)に由来するという説は確証が無くほかにもいくつか説があるが、それでもアドナイ「周辺」に源流があるのではと筆者が期待を持ち続ける気持ちがうかがえる。わたしも同感である。それがメタファーとしてしっくりくるのである…… ワルシャワ・ゲットーにいた詩人イツハク・カツエネルソンが妻と2人の子を絶滅収容所に連れ去られた時の印象に基づき… アメリカ歌手(ポーランド系ユダヤ人)の説もあるが、やはりポグロムから生まれて口承されたものだろうか。2020/08/04
チエコ
3
ドナドナの起源、カバラ主義2015/12/17
猫風船
3
この間読んだカネッティ「マラケシュの声」がいきなり出てきて驚いた。内容としては、著者がマラケシュ、カイロ、エルサレム、サフェド、ヤッフォを巡り、離散ユダヤ人たちの歴史をたどりながら、思索を巡らせる・・といったもの。こうやって書くと非常に魅力的。だから手にとったのだけれど、実際は、うーん、そんなに面白くはないかなあ。視点は面白いんですが... 素人の紀行文にありがちな(私の旅行日記そのものです、はい)、やたら大袈裟で自己陶酔的な文体が、だんだん嫌になってきます。2012/12/15