出版社内容情報
ご存知,諸葛孔明や劉備・関羽・張飛,そして曹操・孫権ら英雄・豪傑たちが活躍する『三国志演義』.それは正史『三国志』を起点に,千数百年の歳月をかけて,民衆と知識人が育てあげた物語世界の集大成である.気鋭の中国文学者が,血沸き肉躍る大エンターテインメントの仕掛けをときあかし,物語を彩る登場人物を縦横に語る.
内容説明
ご存知、諸葛孔明や劉備・関羽・張飛、そして曹操・孫権ら英雄・豪傑たちが活躍する『三国志演義』。それは正史『三国志』を起点に、千数百年の歳月をかけて、民衆と知識人が育てあげた物語世界の集大成である。気鋭の中国文学者が、血沸き肉躍る大エンターテインメントの仕掛けをときあかし、物語を彩る登場人物を縦横に語る。
目次
第1章 正史『三国志』から『三国志演義』へ
第2章 民衆の哄笑と喝采―『三国志平話』の世界
第3章 『三国志演義』の文学性―関羽について
第4章 物語構造の核―劉備・曹操・孫権
第5章 主役たちの描かれ方―諸葛亮と彼をめぐる人々
第6章 異彩を放つ傍役たち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
出世八五郎
7
昔読んだ記憶がある。検索しても三国志岩波新書はこれしかないので登録する。感想:横山光輝三国志を読んだ後に本書を読み、酷く落胆し三国志への興味を失った。理由は歴史が物語であり虚構だったから。孔明は優秀な内政の人間であり、趙雲も劉備の親衛隊であるとか、そういうのが多かったから。
みじんこ
4
演義ではどのような人物造形がなされて効果をあげているのか、主要人物のほか「異彩を放つ傍役たち」も取り上げられている。正史と演義の間にある語り物の要素を受けた平話、張飛のほか龐統の魔術師的描き方の方も印象に残った。魔術師という点では演義では孔明の他にも確かに印象に残る人物たちが複数いたなと思わされた。劉備が三蔵法師等と同様に「虚なる中心」であるとする考え方は面白かった。演義も含めた中国の古典長篇小説では後半が前半をなぞったシミュレーションになる構造が好まれるとの話、趙雲の再来とされた文鴦を思い出した。2023/10/30
ちあき
4
『三国志演義』という作品の成立史を追いながらその魅力について語った一冊。吉川英治や横山光輝の三国志を読破していない、『レッド・クリフ』やテレビゲームも体験していない…そんなぼくでも興味深く読める本だった。史書に異伝や民間伝承がとりこまれ物語に整序されていくプロセス、そこにはたらく作家の想像力、読み手の意識…これ自体がじゅうぶんおもしろい。むろん三国志の世界をよく知っている人のほうが楽しめる本だし、世界史の教科書程度はおさえておく必要があるけれども。2009/05/15
さとっぺ
4
はるか昔に読んだ横山光輝の漫画を思い返しながら読んだ。史実と虚構を詳しく分析してくれており、そのときの時代背景が物語を作っていくのだということがすんなり理解できる。2008/12/27
荒野の狼
3
「三国志演義」の訳などを手がけた井波律子の著になる「三国志演義」の解説書。「三国志」と「三国志演義」の間の時差は1000年以上あることを指摘し、その間に作られた「三国志平話」を紹介。次いで、主要登場人物の紹介がなされるが、ここでも、袁術は袁紹の従弟だが、「演義」では弟、張飛のあさなは益徳(えきとく)「演義」では翼徳など、演義しか知らない一般読者には新鮮な情報が書かれる。「三国志演義」を読んだだけでは知りえない薀蓄が多く、史実との比較が優れている本書は、三国志ファンとしては読んでおきたい。2016/02/04