出版社内容情報
八月六日,壊滅状態の広島で,交信を求める悲しげな女性の声がラジオから流れた…….NHKに舞込んだ一通の手紙から,“幻の声”の主を追う著者の旅は始まる.一七年にも及ぶ取材から見えてきた,巨大な悲劇の下の人間たちのドラマとは? 戦時下のメディアの実像,そして,敗戦を目前にした日本の防空体制の不備をもつく異色の記録.
内容説明
八月六日、壊滅状態の広島で、交信を求める悲しげな女性の声がラジオから流れた…。NHKに舞い込んだ一通の手紙から、“幻の声”の主を追う著者の旅は始まる。一七年にも及ぶ取材から見えてきた、巨大な悲劇の下の人間たちのドラマとは?戦時下のメディアの実像、そして、敗戦を目前にした日本の防空体制の不備もつく異色の記録。
目次
第1章 声が聞こえる
第2章 それは女の声か
第3章 男の声も流れた
第4章 最後の声
第5章 警報放送はあったか
第6章 警報の遅れ、それは…
第7章 死者たちの声
エピローグ 死すとも乱さぬ声
著者等紹介
白井久夫[シライヒサオ]
横浜生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。同大学経済研究所をへて、NHK勤務。1992年、フリー。創英舎(映像記録)を結成(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
39
再読して初めて、本書が二部構成であると気づいた。前半が、女性アナウンサーの大阪を呼ぶ声の追求、後半が空襲警報が出たかどうかの検討である。後半はタイトルとは無関係にみえるが、原爆投下までに警報が早く出るかどうかが人命を左右するという意味で、決して軽視できない。人的条件により警報が遅れて、救えなかった命があったことは、放送・報道の責任というものを考えさせられる。2017/08/11
へくとぱすかる
29
被爆直後のラジオからの女性の声。必死で大阪放送局を呼ぶその声の主は、猛火の中で亡くなったのか? 爆心地から1キロ。壊滅した放送局から声が届くことがありうるのか? 推理小説さながら、幻の声を求めたドキュメントは、しかし、あいまいな結論にしかたどりつけない。証言が得られないこと自体、その惨状を語っていると言えるのではないだろうか。たび重なる空襲や原爆のあともなお、決戦のための手段とされた放送。多くの局員が、終戦直後に現場を去った原因を思うと、放送の果たす役割について、深く考えさせられる。未登録のため再読。2014/08/15
kochi
22
8月6日の朝、原爆投下の直後にNHKのラジオ放送から女性の声が聞こえてきたという投書に触発され、調査を開始した著者は、自身もNHKで番組制作に携わった立場から、「幻の声」の探索というテーマを超え、当時の広島放送局の状況や、その職員たちの運命から、日本の防空体制、報道の統制や、作家の戦争協力にまで及ぶ。本書では広島出身で、原爆に関する作品で知られた詩人原民喜の作品や生涯にスポットが当てられていて、「コレガ人間ナノデス」も紹介されている。広島で育った人は、誰でも知っているというこの詩の役割はまだ終わらない。2019/08/03
さすらいのアリクイ
14
NHKで番組制作経験がある著者が原爆投下直後のNHK広島放送局内で起きたことや、働いていた方たちの行動、消息を調査し、原爆投下後のラジオから聴こえてきたという女性の声の正体を解明しようとするノンフィクション。調査をはじめた理由は著者の制作番組に届いた、投下後にラジオから女性の声が聴こえてきたという投書。著者は女性の声の正体を探すために当時NHK広島放送局で働いていた方たちを取材し、亡くなられた方たちの行動や行方、資料に記入されていないことも集め、少しずつ声の正体に近づいていく。2021/08/13
安瀬内喬
5
ひとつの問題と取り組むとは、こういうことだと、高校生の時に思った。2013/07/07