出版社内容情報
ピープスは一七世紀イギリスの官僚で,のちに海軍大臣となった人物.彼の人柄や性生活も含めた赤裸々な日常生活だけでなく,宮廷や上流社会の頽廃など当時の世相を生まなましく伝えるこのピープスの『日記』は,世界の奇書の一つに数えられている.本書は,その精髄を魅力ある語り口で紹介し,男性観察のまたとない機会を提供する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
32
先日読んでいた本にこの人の日記を参考にゴシップ部分をふくらませた、という後書きを読んで興味を持ち、借りてみました。80年代に日本で出版されているので大分文章も古いんですが、逆に面白かった。かなり浮気性のご主人が、なんやかんや言って奥さんに頭が上がらないのはおかしかったけれど、お仕事にやってきた少女たちにしてみたら虐待以外の何物でもないわけで。奴隷少女の本を読んだばかりだったのでなおさらむっとしつつ、やっぱり笑ってしまったのでした。2020/03/05
さきん
24
平民の出世物語であり、頼れる貴族がないなかで蓄財に勤しむ、浮気や酒の誘惑に度々やられるも勤勉と運の良さで海軍大臣まで登りつめる。適当に手にとった一冊だったが誰かの心うちをそのまま覗いた感じで楽しく読めた。2023/01/28
skellig@topsy-turvy
23
クロムウェルを経て王政復古時代の英国17世紀、仕立屋の息子から海軍大臣にまで上り詰める男の秘密日記。と書くとご立派ですが、コールリッジが「胴体だけの男」と称したというこのピープス氏の日記、一英国人の素朴で刺激的でユーモラスで猥雑な日常満載でにやにやしてしまう。金勘定、権謀術数、家庭、数多の浮気、17世紀倫敦の日常。速記に暗号、外国語を駆使-それにしても、ここまでオープンでいいの?市民的良心、好奇心、俗物っぷりが実に愛すべきキャラクターであるピープス氏は、確かに17世紀英国の「声」を届けてくれます。感謝!2015/09/23
KAZOO
21
この原書の本を購入したので、理解をしやすくするためにあんちょこの意味合いで再度読んでみました。いつもこの本を読むと、日本の元禄御畳奉行の日記(神坂次郎 原著は鸚鵡籠中記)を思い起こします。本当にかなり細かなことまで書いていてそのようなところを見るとこの著者は几帳面であってマニアックな人物であることがわかります。2013/07/20
春ドーナツ
18
かまととぶる訳ではないけれど、5章「ピープス氏、にぎにぎを覚える 1964年」の「にぎにぎ」って何だ? 語感からサド侯爵の常套句みたいなものを思い描く。「さあ、今夜はどこからにぎにぎしようかな。ふふ」該当する日記(速記号と複数の外国語のちゃんぽんで書かれている)の断片をいくつか引用する。「今夜グローヴ船長がタンジャ向けの傭船問題でやってきた。この件で合法的に利益を少し得たいのだが、と仄めかしてみた」「手紙には(*)手袋を一足進呈すると書いてあった。だが箱を開けてみると(*)立派な銀皿と銀杯がはいっていた」2019/06/12