出版社内容情報
病人の生命を救い,ケガを治すことができても,治療の後に体に不自由が残るならば,医学はその責任を果したとはいえないのではないか.こうした医療観のもとで,リハビリテーションの意義が注目されつつある.著者はそれを単に身体機能の回復訓練ばかりでなく,広く障害者の人権回復を求める思想と技術の体系としてとらえ直す.
内容説明
病人の生命を救い、ケガを治すことができても、治療の後に体に自不由が残るならば、医学はその責任を果したとはいえないのではないか。こうした医療観のもとで、リハビリテーションの意義が注目されつつある。著者はそれを単に身体機能の回復訓練ばかりでなく、広く障害者の人権回復を求める思想と技術の体系としてとらえ直す。
目次
第1章 病気から障害へ
第2章 リハビリテーションということ
第3章 思想と技術の出会い
第4章 技術の体系
第5章 リハビリテーションの流れ
第6章 人権の視座から
第7章 問い返される理念
第8章 むすび
著者等紹介
砂原茂一[スナハラシゲイチ]
1908‐年‐1988年。1933年東京大学医学部卒業。専攻は呼吸器病学、臨床薬理学、リハビリテーション医学
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
27
医学的、職業的、社会的リハ(ⅰ頁)。脳出血、脳梗塞、くも膜下出血は脳卒中の3種類(6頁~)。WHOの健康の定義:身体的、精神的、社会的にうまくいっていること(well-being)で、たんに病気や虚弱だけを言わない(13頁)。クルーゼンによると、世の中に死よりももっと悪いことがある。命を救うことよりも、何年にもわたる依存生活から患者を救い出すことのほうがより人道的である(17頁)。人間を生活し働くものであるとしてとらえる立場からの医学の見直しが大切(23頁)。2015/09/22
Apple
21
現代医学はますます進歩し,その一方で重い障害を持ち社会に参加できない人や"恍惚の人"は増え続けているように思います.火事をおさめた後の,焼け跡の始末が重要なことがよく理解できました.リハビリテーションの先生だけでなく,急性期病院のドクターも,それにとどまらず医療従事者でないひと全てがこれを認識し,考える必要があると感じました.リハビリのゴールが社会の一員に復帰することであるならば,社会が受け入れる窓口が広がればそれだけ達成しやすくなるのではないでしょうか.医療関係ではない私も,色々考えることといたします.2023/01/29
鮭
9
リハ医学における古典。脳卒中事例からの展開は今日でもわかりやすい。個人的には各職種の職能について興味深かった。特にOTが慢性疾患に対するリハにその起因があることは今日でも呼吸・心リハにOTが明記されている名残といえる(従事者は少ないが)。また看護師の療養上の世話の疎かさはこの時代からあるようで、本来の看護はリハビリテーション的でなければならないと著者は叱咤している。40年前の本であるが、現在でもリハビリテーションは浸透しているとは言い難く、医学部でも未だに科目にないことを著者はどう思っているのだろうか。2022/10/09
イキュア
7
リハ黎明期における、リハの思想が解説されている。正直この時点で問題視されている内容は現在においても解決されているとは言い難い。これはリハという目に見えにくい生活を扱う中で、改善の成果を目に見える結果で求められ続けた結果、マクロな動作の改善を主張せざるを得なくなったためでもあるだろう。今後はその人の生活にどのような価値が加えられたのかなどを体系化して、点数とは違う成果として伝えていく必要があるかと思う。リハの先達であるラスクが言うように、人生の年月を継ぎ足すのでなく、年月に生命を吹き込むことが重要なのだ。2022/09/11
のりたま
1
医学的・社会的・職業的リハビリテーションのうち医学的リハビリに絞って記されている。リハビリとは何か、技術、社会との関わり、洋の東西の歴史や人権にまで話は及ぶ。病気と障害を火事と焼け跡に喩え、障害は固定した状態ではないと説くが、これがリハビリの出発点であろう。1980年刊行で、モナリザが上野の美術館で展示されたとき障害者の入場を断った話など隔世の感があるし、本書に記された状況のうち、例えばケースワーカーの地位は改善された。しかし本書の価値は失われず、現在でもリハビリについて知るための必読書だと思う。2022/08/18