出版社内容情報
二十世紀を代表する作家モラーヴィア(一九〇七‐九〇)の処女作.主人公の青年ミケーレは,自分をとりまく現実と自分とのずれを意識している.が,あらゆる行為に情熱が持てず,周囲に対して徹底した無関心におちこんでゆく.ローマの中産階級の退廃と,苦悩する若者を描いたこの作品は,当時のファッショ政権から発禁処分をうけた.
内容説明
20世紀を代表する作家モラーヴィアの処女作。主人公の青年ミケーレは、自分をとりまく現実と自分とのずれを意識している。が、あらゆる行為に情熱が持てず、周囲に対して徹底した無関心におちこんでゆく。ローマの中産階級の退廃と、苦悩する若者を描いたこの作品は、当時のファッショ政権から発禁処分をうけた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
341
1929年に自費出版されたモラヴィアのデビュー作。ネオ・レアリスモの祖とされるが、映画におけるロッセリーニなどから受けるイメージとは大いに違っている。ロッセリーニが「動」と「熱」だとすれば、こちらは「静」と「冷」である。ブルジョワ家庭の倦怠が、うねるような作風の中で展開されるのである。作中には5人の人物が登場するが、我々は(少なくても私は)その中の誰にも共感を持って感情移入することはできない。すなわち読者もまた、この倦怠に巻き込まれてゆくのだ。弱冠20歳の作家が書いたとは思えない。モラヴィアの『晩年』か。2018/10/20
遥かなる想い
190
ローマ中産階級の人びとの退廃の日々を描く。 全編に漂う けだるさが心地よく、ミケーネ、 レーオ、カルラ そして母親が織りなす会話は まるで舞台の台詞を聞くように流れる。 それにしても この倦怠感は意図的なのだろうか.. 愚かな母親の周りに蠢く人々..そして、 レーオとカルラの行く末は..登場する人物の ひどく利己的な考えがかえって可笑しい、 そんな上巻だった。2016/11/05
ケイ
97
ああ、なんて愚かなカルラ…。まるで登場人物が5人の舞台を見ているような気持ちになる。彼らは無関心? いや、無関心というより、情熱も持たず、意欲のない、無知で愚かな人たちだ。なぜレーオのような男に好きにさせておくのか。読者は彼等がいとも簡単に堕ちていくのを手をこまねいて見ているしかないとは!2015/11/02
すえ
28
この物語に出てくる人びとは皆、何事にも意欲がなく嘘つきで自己中心的。自分が大事で保身のため時には攻撃的にもなる。そんな希望の無い日常を酷く嫌悪しているのにそれと向き合おうとしない。これが無関心ということだろうか?ただ無関心を装い、逃げているだけ。特に酷いのが24歳の娘カルロ。無気力で自尊心が無さ過ぎる。金持ち紳士レーオに、ただなんとなく自分ではどうすることも出来ずに身も心も束縛される。カルロの弟ミケーレは苦しむ《これは一夜の夢だ、無関心という名の悪夢だ…》(p144)。本当に一夜の夢なのだろうか…下巻へ2020/08/17
えりか
26
自分に無関心な人、他人に無関心な人、世間に無関心な人。5人だけで展開される演劇のような世界は、ただただ灰色。2015/08/27