出版社内容情報
イタリア文学の三巨星の一人で,ルネサンス運動の首唱者であったペトラルカ(一三〇四―一三七四)は,偉大な詩人であるとともに,常に自己自身を問いつつ哲学するモラリストであった.ここに収録した23篇の手紙は,ペトラルカが親しく同時代人や古代人,後世の人に呼びかけたものでモラリストとしての真骨頂を浮彫りにする.本邦初訳多数.
内容説明
イタリア文学の三巨星の一人で、ルネサンス運動の首唱者であったペトラルカ(1304‐1374)は、偉大な詩人であるとともに、つねに自己自身を問いつつ哲学するモラリストであった。ここに収められた23篇の手紙は、ペトラルカが親しく同時代人や古代人、後世の人に呼びかけたもので、モラリストとしての真骨頂が浮彫りにされる。本邦初訳書簡多数。
目次
文学的栄光を夢みて
祖国の解放と再生のために
自然と人間との再発見―ヴァントゥウ登攀記
二つの憧憬―ローマとラウラ
ローマの再発見
孤独生活―自由と文学研究のために
文学的栄光の獲得―桂冠詩人の誕生
文体について
古代人への書簡
古代文化“再生”のために―古典収集活動
古代ローマ再生のために―コーラ革命をめぐって
自己自身への書簡
教皇庁批判
祖国への書簡
文学と政治のはざまで
後継者への書簡
後世への書簡―書簡体自叙伝の試み
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
22
ラウラへの報われぬ恋によってイタリアを代表する詩「カンツォニエーレ」を編んだ詩人として知られ、人文主義者にしてモラリストであり、古典学者、歴史家、哲学者など多才の人であったペトラルカの書簡集。友情に厚く、本を愛してもそれに読まれない知的強靭さと、歴史を識るゆえの達観を感じさせる魅力的な人物だ。キケロ(ヴェローナでペトラルカ自ら書簡を発見した)とアウグスティヌスを特に愛したといわれ、古代古典文学への愛情とキリスト教信仰を両立させていた面白い人でもあり、本書には故人であるキケロに宛てた書簡まで収録されている。2021/01/20
Francis
6
20年ぐらい前に読んだ本の再読。ルネサンス期の詩人にして文献学者など多彩な面を持つ著者の書簡集。自伝的書簡、敬愛する古代ローマの哲学者キケロへの書簡、ローマで革命を起こしたコーラへの書簡、友人への書簡など、いずれもペトラルカの心境をよく伝えるものばかり。ペトラルカの主な文学作品は邦訳が極めて限られており、この近藤恒一氏の手になる岩波文庫の書簡集などどちらかと言えば主要でない作品を読むほかないのは残念だが、これらの本を読むだけでもペトラルカの作品のの素晴らしさは伝わるはず。2015/04/23
馬咲
4
ルネサンスの祖、恋愛詩の名手といった教科書的記述で流されやすいペトラルカの友情、恋情、政治意識、哲学等の諸相に触れる一冊。彼の志す古代文化の〈再生〉とは、フィロロジーによって偉人を抽象的権威から解放し、その具体的な生の姿を彫琢すること。故に彼が語りかけるキケロは非の打ち所のない弁論家ではなく、傾く共和政にて自身の哲学と政治的言動の矛盾に悩む人物として現れる。こうして古典は地に足のついた偉人達との「対話」となり、自己の生について問いを立てる契機ともなる。古代の〈再生〉が新たな「創造」へと繋がる所以が分かる。2023/07/12
shishi
4
[A]ペトラルカの自伝的書簡集。時系列での配列と手紙の前に編訳者による解説があるのでペトラルカについて知らなくても面白く読める。その意味ではペトラルカ入門書としても良書。ルネサンス初期の古典回帰によるヒューマニズムの精神に学ぶところは現代に生きるぼくたちにとっても多い。偉大な文学者の文章は美しい。2013/08/28
保山ひャン
2
友人への書簡から、古代や後世の人にあてた書簡まで。ペトラルカの人生や思想の解説にそって書簡が紹介されており、さながらペトラルカ入門、みたいなおもむきがある。2014/07/30