出版社内容情報
主人公の青年ヒュペーリオンは，祖国ギリシアの独立のため露土戦争に加わる．激戦のなか九死に一生を得るが，愛する恋人を病で失い，やがて悲しみのなか祖国を離れドイツへと赴く……．主人公が友人や恋人に宛てた書簡の形式によって内的経験を物語る，抒情性と省察に満ちた哲学的教養小説．ヘルダーリン（1770‐1843）唯一の長篇作品．
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイキ
8
何度でも読みたい、何度でも読まなければならない、作品のひとつです。「ヘルデルリーンはつひには、イロニーさへも耐へきれぬとしたと思はれる。自身のもつたイロニーのきびしさに、一分のゆとりも皮肉もつくり得なかつたと見える。そして今日の僕はこの嘆きの歌の中にことさらイロニーをわり込み、再び泣いてこの詩人と共にありたい。」(日本浪曼派のために／保田與重郎)、「ヘルデルリーンは芸術を生活から切り離したり、夢を現実の思惟からきりはなす手品を魂の純粋性から許されてゐなかつた。」(清らかな詩人／保田與重郎)2015/10/21
meirokun
6
独逸が産んだ珠玉の名作、といって差し支えないでしょう。ひたすら愛する女性への手紙を書き連ね、その表現力に誰もが圧倒させられるでしょう。愛という不明確なものを実体化して、或いはそれを確かに掴んでいる。今まで古典文学を幾冊も読んできたが、これ以上の傑作との出逢いはなかったし、またこの本との出逢いにより、これ以上の恋愛小説には辿りつくことはないだろう。誰もが心を動かされ、圧倒される。2010/09/01
無能なガラス屋
5
「魂が美しく純潔であればあるだけ、魂無き者と謂われる他の幸福人たちとも打解けて親しくなるとは、これは實に永遠に確かなことで随所にあらわれている。」2022/09/27
保山ひャン
2
ルイーゼ・リンザーの『波紋』の主人公の少女が暗唱してみせたのがこの『ヒュペーリオン』。『ヒュペーリオン』は青年ヒュペーリオンが友人や恋人と交わした書簡によって綴った教養小説。恋人ディオティーマからの「私達は別れましょう。そうおっしゃるのはもっともです。私も子供が欲しくはありませぬ。奴隷の世界へは子供をやりたくはありませぬから」の手紙にヒュペーリオンは「幾度私は忘恩の行いをしたことだろう」と反省、最後には「血は心臓の中で別れては帰ってくる。その総てが燃え上がる合一した永遠の生命なのだ」の境地に。2022/03/30
