出版社内容情報
彼は一般には『森の生活』を通じて都会生活からの逃避の讃美者として知られているが,あくまでも権威に屈しない真の自由主義者であり,民主主義者であった.ことに急進的奴隷解放をとなえ,ついに死刑になったブラウン大尉の弁護のための演説は彼が単なる観念的な自由主義者でなく,行動の人であることを物語っている.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
53
森の思想家ソローの多面的なエッセイが6編。ジャンル的に言うと1)民主主義論2)奴隷制反対の時事論3)反文明論4)植物学5)反経済論6)文学評論、と仮に分類してみたが、やっぱり違うな。すべて既存の分類をはみ出ている。6)はソロー若き頃に書いた英国の同時代の歴史家・評論家カーライルについての評論なのだが、カーライルにこう要望している。「才能から出る言葉を減らし、人格から出る言葉をふやすべきである」「彼のもっと内面生活について知りたいのである」(p318)。ソローが、自らこのことを実践した成果がここにある。2016/03/26
ロビン
18
19世紀アメリカの有名な詩人・思想家・博物学者であり「コンコードの哲学者」エマソンとも友人であったソローのエッセイ集。国家と個人、自然と哲学、黒人差別問題、文学評論と多面的な切り口の良書である。ソローの言葉は極めて率直で力強く、男らしく、勇敢で、独立しているがもう一方で詩的、哲学的で難解でもある。オーウェルやハズリットのスタイルに近いかもしれないが、恐らくソローはより多く「詩人」であろう。人間の魂と自然と宇宙の関りについて何かを掴んでいる人間の口ぶりなのである。実に充実して噛み応えのある書物であった。2019/07/02
壱萬弐仟縁
12
6編から成る。「国家が個人を、国家よりも高い、独立した力として認識し、国家の力と権威はすべて個人の力に由来すると考えて、個人をそれにふさわしく扱うようになるまでは、真に自由な文明国は決してあらわれない」(54頁)。彼が指摘するのは、国民国家や富国内実を問うものである。国民ひとり一人の力量を高めることが必要なのである。「人間は年を取るにつれて、じっと座ったまま、屋内の仕事に従事する能力が増大」(113頁)。合点。T.カーライルについても(252頁~)。座談の名手という(270頁)。まじめ(278頁)。続く→2013/08/09
父さん坊や
6
アメリカの民主主義思想がこんなに急進的だったとは!選挙すら手段として十分ではないそうだ。2018/12/23
大ふへん者
2
『森の生活』のソローによる短編集。ここでは論文『市民の反抗』について述べる。解説によるとガンジーやキング牧師にも大きな影響を与えたとのこと。個人の良心に対する国家的な正義(?)、法律の優先に疑問を持ち、人頭税の支払いを拒否しつつも公道税はきちんと支払うあたり、ソローの思想は徹底している。隠遁者の印象が強かったけど、想像以上に実践的で親近感が沸いた。こんな情熱的なものを見せられると革命家になりたくなる・・・。トマス・ペイン的な「小さな政府」を理想とする良論。2013/06/21