出版社内容情報
人間的魅力にみちた兵士たち,無階級的な社会状況――一九三六年末,ファシストと闘うために,内戦下のスペインへやってきた著者(一九〇三―五〇)が魅せられたものは,一筋の燃えさかる革命的状況であった.アラゴン戦線やバルセロナ動乱での体験を中心に,スペイン市民戦争の臨場感あふれる貴重な証言となったルポルタージュの傑作.
内容説明
一九三六年末、「ファシスト」と闘うために、内戦下のスペインへやってきたオーウェル(一九〇三‐五〇)が魅せられたものは、一筋の燃えさかる革命的状況であった。共和国側民兵部隊に参加した体験に基づく臨場感あふれるルポルタージュは、スペイン市民戦争の貴重な証言。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
74
左派の人民戦線政府に対して、右派の支持を得たフランコ率いる反乱軍が蜂起したスペイン内戦。オーウェルは義勇兵として政府軍に加わり、アラゴン戦線に出る。苛酷な塹壕戦だったが、兵士たちは互いの平等を信じて戦っていた。階級のない社会への期待を胸に休暇に戻ったオーウェルがバルセロナで見たものは、失われつつある平等と、政府軍の内部闘争であった。再び戻った戦場で負傷したオーウェルは、ソ連の支援を受けたコミュニストに粛清の対象とされるも、間一髪で国外へ脱出する。ソ連の全体主義的側面への批判の契機となったルポルタージュ。2023/11/05
syaori
54
歴史の本を読んでいると大抵戦争には大義が、革命には理想があるもの。でもこの本が教えてくれるのは戦争はむしろ「残念なもの」なのだということ。戦争とは排泄物と腐った食べ物の臭気のなかで「ぬかるみ、しらみ、飢え」と戦うことで、大義も理想も安全な所にいるジャーナリストや政治家により堕落していくばかり。そして理想に身を投じた人々は政治的な対立のために投獄され死んでいく。「何と無意味なことか!」 それでも作者が幻滅しなかったのはその中で個々人が見せた「人間らしさ」のためで、この本は確かにそれへの讃歌なのだと思います。2018/07/13
kaizen@名古屋de朝活読書会
42
スペイン内戦を表した文学の一つ。この本を読んで、バルセロナに行きたいと思い、スペイン語を勉強した。ガウディという名のホテルに泊まり、ガウディの立て始めた教会を見学した。マドリッドと、バスクとバルセロナに行ってみて、仕事をしてみないとわからないことは多いなと思った。2020/03/05
yumiha
39
一読した時は、政党やら労働組合やら、コミュニスト、トロツキスト、アナーキストがどう違うか分からず混乱。それでノートに整理してから読み直すと、読み易かった。『誰がために鐘は鳴る』(ヘミングウェイ)と本書との一番の違いは、POUM(マルクス主義統一労働党)の評価だ。ヘミングウェイは、POUMへの揶揄的な視線をカラコフというソ連のジャーナリスト(コミュニスト)に語らせている。だがオーウェルは、初め批判的だったが、その民兵として戦い、バルセロナの市街戦の経験などによって、コミュニストへの不信や反発を募らせた。2019/02/05
slider129
38
教科書などで勉強した所で本当の事はわからんのだな。例えばスペイン内戦をwikiなどで調べてなんとなく解った気になっていたのが、そんなのは上っ面でしかなかった事に気付かされた一冊。ここに書かれていることはオーウェルが義勇兵として参加した内戦での、彼自身が体験したことが全てであるが、それは読む者をその時その場所にタイムスリップさせてくれているかの様な臨場感に溢れている。この内戦でオーウェルは首を貫通する銃創を負いながら奇跡的に助かったのだが、それは本書やその後の彼の作品を世に送り出させるが為の神の思し召しか。2017/11/17