出版社内容情報
別名「老妻物語」としても知られる,イギリスの自然主義作家ベネット(1867‐1931)の代表作である.作者は自分の生まれ故郷「五つの町」を舞台に,この町で仕立屋を営むベインズ夫人とその2人の娘コンスタンスとソファイアの2代にわたる女の生涯と栄枯とを,正確な写実と伝統的なユーモアの円熟した筆致で描き出した.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
91
最初にある作家の紹介、それに続く作家本人による序文を読むと、1800年代半ばに生まれたこの作家は、父の下で働いていたのを飛び出し、自らの事務能力を生かして仕事をしているうちに、書物をたくさん読み、30代にパリにいって10年ほど暮らし、本を書くようになったようだ。彼はモーパッサン等フランス文学を大いに読んだが、モーパッサンの「女の一生」に匹敵するイギリスの女の話を書くことにした。そして、フランスの文豪に負けないように主人公を2人の女性、ソフィアとコンスタンス、の物語にした。感想は中巻以降に。2016/07/26
扉のこちら側
69
2016年246冊め。【159-1/G1000】「老妻物語」の新訳版。母娘二代にわたる女の物語とのこと。この上巻では仕立屋のベインズ夫人と、彼女の娘たちがそれぞれ親から巣立っていくまでが描かれる。美人ではないが愛嬌のあるコンスタンスと、美人だけど学問に勤しみ頑ななソファイアの姉妹。姉は結婚して家を継ぎ、妹は家を飛び出して行った。移り変わる田舎町の物語というのもおもしろい。何かで読んだ「ファイブタウンズ」というのは、この作品の舞台のことだったとようやくわかる。2016/04/10
NAO
52
中部イングランドに点在するファイブタウンズ。このあたりの人々は、生れてから死ぬまで、自分の町からほとんど出ることもなく暮らしている。町で名の通った呉服店の店主でありながら働き盛りの頃に中風で倒れ得たきりになっている主人公の姉妹の父親は、こういった町から出ることのない人々を象徴的する存在として描かれている。だから、町を出たがっている妹娘のソフィアが不注意での出来事とはいえ父を死なせてしまったのも、当然の運命だったのだろうか。2017/02/26
秋良
5
【G1000】親子二代に渡る女の物語、イギリスの閉鎖的な田舎…うーんあまり得意でないかも。母と娘は父と娘に比べて関係性の密度が濃く、同性ゆえに相手の弱点も分かり、傷つけ方も心得ているのがリアル。2018/09/16
takeakisky
0
当世人気男(the card)以来のアーノルド・ベネットと5つの町。この本の主な舞台はバーズリーのようだ。グレートブリテン島の臍の位置。無造作に淡々と書かれるなかに、見えるともなくユーモアが漂うような、気のせいのような。強烈なキャラクターがいるでもなく、目を覆うような事件が起こるわけでもなく。そういえば、お祭りで見物人が象に殺されていたけれど。この本が初めの一冊だったら、三分冊の一冊目で投げていたかもしれない。微かに面白いまま、次の分冊へ向かう。ファイアンス、ではなく、ソファイアはどうしているのだろう?2023/09/06