出版社内容情報
日常のなかの不思議を研究した物理学者で,随筆の名手としても知られる寺田寅彦の短文集.大正9年に始まる句誌「渋柿」への連載から病床での口授筆記までを含む176篇.「なるべく心の忙(せわ)しくない,ゆっくりした余裕のある時に,一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」という著者の願いがこめられている.(解説=池内 了)
内容説明
日常の中の不思議を研究した物理学者で随筆の名手としても知られる寺田寅彦の短文集。「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」という願いのこめられた、味わいの深い一七六篇。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
135
夏目漱石の弟子である寺田寅彦博士の随筆。「なるべく忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」とのことですが、こんな時代にそんな無体な・・・と思いましたが、寝る前だけは流石に忙しくないだろうと思い読み始めるとハマってしまい大変なことになってしまいました。ホントどうでもいいことからガツンと来る一発まで何でもござれで自然と引き込まれました。2020/07/12
ehirano1
88
「いつまでも花を咲かせないで適当に貧乏しながら働く。平凡のようであるが長生きの道はやはりこれ以外にはないようである」、とのこと。確かにそうかもしれないと思いましたが、現時代はそれを許さないでしょうね・・・。2021/11/16
ehirano1
87
「詩人をいじめると詩が生まれるように、科学者をいじめると、いろいろな発明や発見が生まれるのである」、と。ここでの「いじめる」は「批判」です。「批判」は必要、だけど常に建設的であれば世の中もっと良くなるのに、と思ったりもします。そうでなければ、「語り得ぬものには沈黙しなければならない(ヴィトゲンシュタイン)」で良いのではないかと思います。2020/12/13
ehirano1
80
「一に一を加えて二になる。これは算術である。しかし、ベクトルの数学では、1に1を加える場合に、その和として、0から2までの間の任意な価を得ることができる」。何でもない当たり前のフレーズなのですが、社会ってのは算術ではなくてベクトルの数学だよ、と当方の頭の中で変換されました。他の事でも変換できないかな?と遊び始めた結果、またもやエライことに・・・・・寝れんやろ、先生!(←責任転嫁!)2022/04/02
肉尊
79
寺田寅彦の随筆の魅力は、科学者の視点で日常三千世界を具に観察しているところ。現代の日本はあまりにも文系/理系或いは体育会系/文系のような構造に当てはめて棲み分けがなされているかのようで、この類の随筆は文系視点での眼差しが多い。翻って、以下に挙げる連句の幾何学的表示のように類稀なる視点からの考察が100年という歳月を忘れるような奇抜さ、斬新さをもたらしてくれる。彼は災害教育を教育現場に活かし、選定者の教育も必要だと提言しているが、その鋭い観察眼は、世界を純粋に見つめる幼き頃の眼差しに端を発するのだろう。2022/12/30