出版社内容情報
二条家の流れをくむ歌人,宗良親王(1311‐1385)撰の準勅撰和歌集.弘和元(1381)年奏覧.後村上天皇の入撰歌数百首をはじめ,宗良親王,長慶天皇,花山院家賢,花山院師賢,後醍醐天皇,洞院公泰らの和歌1400首余を収録.四季や恋など伝統に従った技巧的な詠歌が多い.「神皇正統記」とならぶ吉野朝公家文化の精華である.初句索引・作者索引を付す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
23
新古今の作歌技巧をひきついだマニエリスムの行きつく果ては苦いレアリスムだった。南北朝動乱のなかでもはや紅旗征戎わがことならずというわけにいかず慣れない弓矢を手にし、まぼろしの憧れの対象だったはずの歌枕は現実に流謫と転戦の地となる。こころならずも後にした都への懐旧と吉野の宮の寒々しさが交叉する雑歌や哀傷歌に佳品が目立つ一方恋歌の影が薄い。式子内親王のような個性的な女流がいなくて、全体に男の歌が多く、女性が主人公だった宮廷歌壇の衰微をうかがわせる。初版は1940年、大戦中に書かれた校訂者の序文は→コメント欄へ2019/08/21
双海(ふたみ)
15
宗良親王撰。吉野朝の人々の歌を勅撰和歌集にならって編んだもの。勢力回復を期して転戦する人々の切実な悲愴の情を吐露した歌も多い。2014/03/30
LUNE MER
14
定家の後、二条(保守派)・京極(新風)・冷泉の三派に分裂したお家のうち、南北朝に連なるところの持明院党(北朝)の京極派に風雅和歌集を含む三つの勅撰和歌集の編纂を奪われた大覚寺党(南朝)の二条派が対抗して編纂した準勅撰和歌集、という立ち位置を理解しておく必要がある異色の和歌集。玉葉や風雅で京極派の新鮮さ(絵画に喩えると印象派のような詠み方という意見もあり)が評価されることの裏返しで、二条派の和歌はマンネリ(素人がすみません💦)。そもそもかろうじて玉葉は文庫化してくれた岩波が風雅も文庫化してくれてないのに2020/06/23
miyuki
3
1月30日より。中世の続後撰集以降の和歌は読んでないので断定はしないが、詞の上で平坦な歌が多いという一般的評価はやはりかわらないであろう。吉野朝歌人たちはその存在が悲劇的なので、歌に哀愁がこもっているのは必然であるか。特に雑部の歌にはやはり彼ら吉野朝の朝廷人の雰囲気が大きく伝わってきて読む価値があろう。中世にどのような歌の技巧の変遷がみられたらのかはしらないが、新古今集などからすればやはり変化のみられる新しい(そして軽い)見方の技巧の歌があり、悲劇だけでなく趣向の面でもおもしろい歌があったのが意外だった。2015/01/31