出版社内容情報
常民の世界観の中心にあるタマとカミの概念.死生観をかたちづくる他界のイメージ.ウブガミや祖霊,疫病神や動物霊など民俗の神と人々の生活・祭祀……神と人間と自然の交渉を明らかにする民俗学の画期的入門書.オリジナル版.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
9
久米島における四月の虫送りの呪言には、鼠に対するあらゆる悪態がこもっているという。「奄美の北の薩南七島では笹の実が豊かにみのる二十五年毎を狙って、ネズミの大群が海を渡り押しよせてきては、一物ものこさず食い尽くして去っていっとたという物語が今もなお語り伝えられている。…ネズミと共に恐怖されたのは伝染病であった。薩南七島では島外者の上陸をことのほかに気にした。…それが蔓延すると島は全滅の憂き目にさらされる。…もはや助からないと判断されたものは、島民であっても船に乗せ、赤い帆をかかげて島の外に流しやるという」2022/06/12
佐倉
6
民俗学の本。興味深かったのが神話についての話で、例えば卵生神話(と世界卵)。インド、エジプト、東南アジア、韓国など世界各地で広く見られるが日本には見られない。また洪水説話も記日紀神話には見られない。ここで筆者は土佐の羽衣伝説を持ち出す。飛び去った天女を追いかけた男は瓢を壊してはいけないという禁を破り地上へと押し流されてしまう。これと同類の他国の神話と比較し、洪水-瓢-卵という繋がりを見いだす。日本にも卵生神話があったはず、そしてそれは洪水神話とも繋がりがあったはずだ、という仮説は読んでいて興奮した。2022/06/10