出版社内容情報
稼業ひとすじ45年。かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角(チョガク)も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。守るべきものはつくらない、を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。韓国文学史上最高の「キラー小説」、待望の日本上陸!
内容説明
稼業ひとすじ四五年。かつて名を馳せた女殺し屋・爪角も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。拾ってしまった捨て犬、しきりに突っかかってくる同業者、たまたま秘密を共有することになった医者―。周囲の存在に揺り動かされ、みずからの変化を受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。「生への讃歌」と絶賛された韓国発の新感覚ノワール、待望の邦訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
216
破果、それは御歳65歳でありながら「業者」いわゆるエージェントから仕事を請け負う殺し屋であるところの老婦人の名である。物語は現在の、衰えたとは言えまだまだ現役の彼女のキレキレの仕事ぶりと、過去の彼女の悲惨な生い立ちを行きつ戻りつしながら語られるが、ストーリーの運びに一切無駄がない為息つく暇もなく一気に読まされてしまう。ラストの因縁の相手業者との死闘の場面のスリリングな事と言ったら。読んでて気付けば深夜というのに眠気も吹っ飛ぶ物凄さだ。韓国産の小説故か多少読みにくさを感じる文体だけど、面白さは保証します。 2024/02/21
やいっち
138
「腐り、崩れ、扱いに困るものとなった命を前に、呆然と座り込んでしまった作家の感覚は、「老人」で「女性」で「殺し屋」という異色の主人公誕生へとつながった。」老いに戸惑う女殺し屋の哀れな末路の物語としても読めるが、男性社会でサバイバルせんとする女性の厳しい生き方の物語としても読めそう。アクションシーンの緊迫感はなかなか。2024/05/12
fwhd8325
126
ノアール小説でいいのだと思うけれど、実に表現が豊かで文学的な薫りを強く感じました。とても面白い読書でした。これは著者だけでなく役者の表現力も随分と貢献しているのでしょう。行間にイメージされるシーンの数々は、あとがきにあるように映像化を期待したい。2023/08/05
モルク
124
65才女殺し屋。彼女の生い立ち、殺し屋の素質を見込まれ「防疫」の教育を受け45年ハードな場面をくぐり抜けてきた。彼女も自分の老い、心身共に衰えを感じ、守りたいものを作らないという信念が揺らぐ。老いた犬と暮らし、ふと知り合った年下の医師を思慕しその家族を守ろうとする。そんな彼女の変化が年齢の近い私には身にしみる。後輩の若き殺し屋トゥのこれでもかというほどの飽くなき挑発。そうか、彼はあの時の少年…それもまた悲しい。韓国のノワール小説もおもしろい。2023/05/04
アン
108
バラック村で生まれ、奉公先から追い出された少女爪角(チョガク)は、防疫と呼ばれる殺しの仕事を叩き込まれ、ターゲットは必ず仕留める女殺し屋として名を馳せてきた。守るべきものは持たず稼業一筋45年。そんな彼女も65歳を迎え、老いによる心身の衰えからは逃れられず、致命的なミスを…。密かな思慕と動揺、過去の苛烈な日々と因縁。彼女に執拗に付きまとう血気盛んな同業者トゥの存在が不気味で、終盤の死闘場面は息を呑む。熟した果実が朽ちるまで眩い瞬間は訪れるのだろうか…。冷徹な爪角が垣間見せる人間味に心揺れる韓国ノワール。 2023/06/09