出版社内容情報
国境を越えて広がるイスラーム世界において,「国家」(ダウラ)とは何なのか.王権はいかにして支配を正当化したのか.即位儀礼,民衆と王権との関係,社会秩序の維持等の現実面に光をあて,イスラーム史における国家の意味を考える.
★本書は『書評空間 KINOKUNIYA BOOKLOG』にエントリーされています。
内容説明
七世紀以来、イスラーム世界は地域・民族の枠を超えて東西に広がった。しばしば「ネットワーク型」とも形容されるこの広域世界において、「国家」とはいかなる存在だったのか。王権はいかにして支配を正当化し、統治体制を確立したのか。七‐一六世紀のイスラーム史の展開と、法学者・知識人によるイスラーム国家論を広い視野から押さえつつ、豊富な史料をもとに、即位儀礼、民衆と王権との関係、社会秩序の維持者としての王権の役割、などの現実面に光をあて、イスラームにおける国家の意味を考える。
目次
プロローグ―国家と王権を問う意味
第1章 初期イスラーム時代の国家と王権
第2章 国家と社会のしくみ
第3章 後期イスラーム時代の国家と王権
第4章 王権儀礼と社会の慣行
エピローグ カリフ・スルタン・シャー
著者等紹介
佐藤次高[サトウツギタカ]
1942年生。アラブ・イスラーム史。現在、早稲田大学文学部教授、東京大学名誉教授、財団法人東洋文庫研究部長。文学博士
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感想・レビュー
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しろのやま
1
現代の我々が捉えるような近代的な主権を持った「国家」ではなく、また近代ヨーロッパや古代オリエントとも異なる「王権」がある。その成立から東西に拡大したイスラーム、この本は主にマグリブからインダス川の西あたり(いわゆる中東地域)に光が当てられる。予備知識なしだといささか読むのがツラい、豊富な資料と独特の世界観をもつイスラームへの好奇心が一気に読ませてくれた。奴隷(マムルーク)は西洋のような一方的に搾取される側ではないなど、西洋的な視点に偏りがちな私たちに新たな視点と気付きも与えてくれる啓蒙の書でもある。2013/02/05