この度「今こそ!人文書宣言」では、トークセッション「動物は電子書籍の夢を見るか?」――「<書物的 実在論 リアリズム>に向かって」#2(終了しました) と連動したブックフェアを開催いたします。 選書者は今福龍太氏(東京外国語大学教授)です。トークイベントとあわせ、是非お立ち寄りくださいませ。
日々の睡眠を周期的な季節の巡りに投影したとき、冬のあいだの巣ごもりである冬眠は、わたしたちの種としての生存にとって不可欠のプロセスである。低体温となり、代謝によるエネルギーの消費をおさえて冬の枯渇を生きのびること。眠りにつく前に、巣穴には食糧がたっぷりと保存され、体内には脂肪が蓄えられる。日常の消費活動のリズムから脱したゼロ度の身体が、内なる栄養をゆっくりと燃焼させてゆく。不活性に見える冬眠のなかに、熾火(おきび)のように赤い炎は潜伏し、一瞬の発火に身構えながら春の湧出にむけて待機する。
本もまたそんな代謝のリズムをそなえた、不思議な生体なのだ。生命世界を人間の個人主義的な欲望から外に向けて解放したとき、その野生の森にはすべての動物たちとともに、きっと書物も棲んでいる。人間に、飛躍のための沈潜をうながす本たちがここにいる。その本たちもまた、自らの春の飛翔にむけて体内の熾火をかかえながら、巣穴で鋭く静かにまどろんでいる。
今福龍太(東京外国語大学教授)


