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五十三

山室信一

戦争と人間そして非戦

 


●山室信一さんエッセイ


 8月になるとメディアにおいても戦争や原爆などをテーマに取り上げることが慣例となってきました。そのように単なる年中行事となっていることに違和感を覚え、惰性となっていることに倦んでしまい、却って戦争という今も絶えることのない事態から目を「背けさせる」ことになっていることも否定できない事実のようです。

 しかし、世代の問題かもしれませんが、私自身は小学生の頃から、夏になれば戦争に係わるものを半ば慣習のように手に取ってきました。そして、1980年代からはアジア各地の戦跡や博物館を巡る旅を続けてきました。日本から数千キロも離れた灼熱のジャングルのなかに立つとき、故地で平穏な生活を送っていた人たちがなぜ一面識もなかった人と殺し合い、憎み合うことを強要されなければならなかったかという疑念をぬぐい去ることができません。その想いを反芻しながら今夏もまた戦争に係わる本を手にすることだけが私個人にできることなのですが、今回はいつも読まれる本の他に是非一冊でも加えて戴きたいと願う著作を選んでみました。

 私自身、直接的には戦争の体験も記憶もなく、ただ傷痍軍人の人たちの姿や占領軍の兵舎などを目にした記憶から戦争を想像することしかできません。しかし、それだからこそ戦後64年を経て戦後生まれが8割近くになった中で体験してはならない殺傷行為としての戦争を、体験のない世代がいかに受け継ぎ伝えていくのか、という問題がさらに深く考えなければならない段階に入っているようにも思われます。他方、矛盾するようですが、私が生まれてきて以来、日本が直接に参戦していないにせよ、世界のどこかで絶えることのなかった戦争について、どのように対処していくべきなのか、それを知らせる任務を担うのは誰なのか、を考えることも忘れてはならないはずです。

 現代の戦争では、死者の9割は一般の市民になっています。戦争とは決して兵士だけの問題ではないのです。そして、日本では来年5月には、いわゆる「憲法改正に関する国民投票法」が施行されますから、第9条をはじめとする憲法のあり方を国際的な視点から構想していくことが要請されてきます。

 人々は兵士としてまたジャーナリストやその家族として、戦争といかに関わってきたのか、また植民地を含む無辜の人々にとって戦争とは戦後とは何だったのか、そして今後の国際社会のなかで日本が果たしうる役割とは、いかなるものなのか・・・等々のことを考える際に、私にとって有益であった本を挙げてみましたが、その中の1冊でも平和構築国家としての日本の行く末を見定め考えて戴くための手がかりになることを祈念してやみません。

【山室信一】


●山室信一さんプロフィール


山室信一さん(やまむろ・しんいち)

1951年、熊本市生まれ。東京大学法学部卒業。
衆議院法制局参事、東京大学社会科学研究所助手、東北大学助教授などを経て、京都大学人文科学研究所教授(法政思想連鎖史)。著書に『法制官僚の時代―国家の設計と知の歴程』『近代日本の知と政治―井上毅から大衆演芸まで』(木鐸社)、『思想課題としてのアジア―基軸・連鎖・投企』『ユーラシアの岸辺から―同時代としてのアジアへ』(岩波書店)、『増補版 キメラ―満州国の肖像』(中公新書)、『日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界』(岩波新書)、『Manchuria under Japanese Dominion Encounters with Asia』 (University of Pennsylvania Press)



●山室信一さん選書リスト

※以下でご紹介している書籍は、【紀伊國屋書店BookWeb】でお買い上げいただけます。

2つ以上の商品を選択する場合には、チェックチェックを入れて、一番下のかごボタンを押してください。

1.
世代を超えて語り継ぎたい戦争文学

世代を超えて語り継ぎたい戦争文学

沢地久枝 / 岩波書店
2009/06出版
ISBN : 9784000236843
229, 20cm
¥1,785(税込)
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自らも手練れの歴史の語り部である二人が、編集者としてまた調査助手として親炙した作家の素顔に触れながら、現時点で戦争文学を読むこと、そして語り継ぐことの意義を語る。それ自体が貴重な歴史的証言となっているが、平易で優れた読書案内として何よりも有用である。できれば、日本が軍備強化をすべきだと考えられる方にこそ、自らが兵士として見も知らない人に銃を放つ場面を想像しながら読んで戴きたい。
2.
レイテ戦記

レイテ戦記 上巻

大岡昇平 / 中央公論新社
1990/06出版
ISBN : 9784122001329
450p 16cm
¥879(税込)
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日本軍8万4千人、米軍4千人という死者の数としてしか残されない戦争の記録と記憶。これに対し、戦場で這い回っていた一人ひとりの兵士の地べたからの目線と戦場となったフィリピンの人々の想いを可能な限り忠実に再現することをこだわり抜くことで、戦場の実相をえぐり出す。これは全ての戦死者のために建てられた紙碑である。澤地久枝『滄海(うみ)よ眠れ−ミッドウェー海戦の生と死』(文春文庫)も、その記録魂を受け継いだ作品。
3.
レイテ戦記

レイテ戦記 中巻

大岡昇平 / 中央公論新社
1990/06出版
ISBN : 9784122001411
474p 16cm
¥899(税込)
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4.
レイテ戦記

レイテ戦記 下巻

大岡昇平 / 中央公論新社
1989/03出版
ISBN : 9784122001527
504p 16cm
¥919(税込)
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5.
人間の條件

人間の條件 上

五味川純平 / 岩波書店
2005/01出版
ISBN : 9784006020873
583p 15cm
¥1,260(税込)
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事実を記録として残すだけでなく、実体験を文学として昇華させことにおいて戦争に係わってしまう人間というものの存在理由を問い窮めると作家の情熱(あるいは執念)が生んだ叙事詩。しかし、この長大な作品も、次に書かれた大作『戦争と人間』のための習作にすぎなかったのかもしれない。トルストイの『戦争と平和』を想起させる大河小説。
6.
人間の條件

人間の條件 中

五味川純平 / 岩波書店
2005/02出版
ISBN : 9784006020880
641p 15cm
¥1,365(税込)
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7.
人間の條件

人間の條件 下

五味川純平 / 岩波書店
2005/03出版
ISBN : 9784006020897
598p 15cm
¥1,260(税込)
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8.
最悪の戦場に奇蹟はなかった

最悪の戦場に奇蹟はなかった ガダルカナル、インパ−ル戦記

高崎伝 / 光人社
2007/03出版
ISBN : 9784769820192
478p 16cm
¥899(税込)
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中国からはじまってガダルカナル、インパールという最も苛烈な戦線に送られ続けた兵士の肉声の記録。人命よりも軍旗などが尊重される組織のなかで、兵士たちの怒りや生き残ることへ複雑な想いなどの感情の渦が率直な口吻で記され、人の命がいかにして軽くなっていくものであるのかに愕然とする。光人社NF文庫は、こうした兵士たちの「生身の声」を集めた宝庫でもある。
9.
戦艦武蔵のさいご

戦艦武蔵のさいご

渡辺清 / 童心社
1979/11出版
ISBN : 9784494026371
188p 18cm
¥567(税込)
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16歳で志願して海軍に入った兵士が、大和と並び称された武蔵がレイテ沖海戦において、いかなる最後をたどったのかを淡々と記す。そこからは戦略や機動力を無視した巨艦大砲主義が、日本海軍の虚栄の象徴でしかなかった空しさだけが浮き上がってくる。名文とされる吉田満『戦艦大和ノ最期』(講談社文芸文庫)よりも本書の方が身体感覚としての痛覚を呼び起こす迫真性をもっており、小学生にも読めるように文飾を排して書かれた文章は読み聞かせにも適している。
10.
戦艦武蔵

戦艦武蔵

吉村昭 / 新潮社
1992/11出版
ISBN : 9784101117010
280p 16cm
¥459(税込)
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膨大な資材をつぎ込んで武蔵が建艦されていく過程を調べ上げた記録文学。戦争を遂行していくためには、その目的や意義が何かを不問に付し、ひたすら与えられた課題に立ち向かう一途さとそれに対応した一種の合理主義が不可欠であったこと、戦争を推進したのは単なる恐怖心や狂信だけではなかったこと、などを明らかにして秀逸。ノンフィクションを書く著者の意気込みと不安を吐露し、戦争と当事者の記憶の曖昧さに潜む問題を考えさせる『戦艦武蔵ノート』(文春文庫)も興味深い。
11.
戦争の日本近現代史

戦争の日本近現代史 東大式レッスン!

加藤陽子 / 講談社
2002/03出版
ISBN : 9784061495999
293p 18cm
¥798(税込)
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1945年までの日本は、日清戦争以後、ほぼ10年ごとに戦争を繰り返してきたが、なぜそうしたスパイラルに入りこんでしまったのか、なぜ日本人の意識や政策決定者において戦争が肯定されたのかを簡潔・明快に分析した著作。読み物主義の昭和史が流行るなかでどれを信頼すべきか不安な方、そして戦争について書かれた専門研究書があまりにも多すぎて、どこから入っていけばいいのか惑われている方には良き指針となるはずの一冊。
12.
昭和陸軍の研究

昭和陸軍の研究 上

保阪正康 / 朝日新聞出版
2006/02出版
ISBN : 9784022615008
637p 15cm
¥1,260(税込)
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研究と銘打たれた大部の本であるために躊躇されかねないが、叙述はあくまで日本陸軍を主軸に据えて描かれた昭和史であり、インタビューなどの着実な手順を踏んだうえで、なぜ日本において「戦争」という政治的選択がなされざるをえなかったのかを問い質す姿勢が貫かれている。靖国問題などにも影を落とす旧軍組織や遺族が戦後社会において果たした意義についても追及されている。
13.
昭和陸軍の研究

昭和陸軍の研究 下

保阪正康 / 朝日新聞出版
2006/02出版
ISBN : 9784022615015
629p 15cm
¥1,260(税込)
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14.
日本軍のインテリジェンス

日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか

小谷賢 / 講談社
2007/04出版
ISBN : 9784062583862
248p 19cm
¥1,680(税込)
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旧日本軍の組織や意識における欠陥や問題点については、多くの指摘がなされてきた。本書では情報の収集・分析・利用に関するインテリジェンスについて、それが政策や戦略の決定にどのように組み込まれ、あるいはなぜ活かされなかったのかを冷静に分析している。情報と戦争、さらには日本のあらゆる組織における情報への関わり方を考える際にも示唆に富む。
15.
皇軍兵士の日常生活

皇軍兵士の日常生活

一ノ瀬俊也 / 講談社
2009/02出版
ISBN : 9784062879828
278p 18cm
¥798(税込)
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日本の軍隊における心身両面での陰湿なシゴキの実態については、野間宏『真空地帯』(岩波文庫)などで描出されてきたが、本書は実際に兵士たちがどのように徴兵され、手当や食事や戒名・墓石などにおいて不公平な扱いを受けていたのか、また戦死した場合にいかに通知や認定がなされたのか、などの兵士の日常について知ることができる点で恰好の書。
16.
ボクの満州

ボクの満州 漫画家たちの敗戦体験

中国引揚げ漫画家の会 / 亜紀書房
1995/07出版
ISBN : 9784750595245
243p 21cm
¥1,580(税込)
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赤塚不二夫、ちばてつや、北見けんいち、上田トシコ、森田拳次、 高井 研一郎などの満洲に生活していた漫画家たちが、敗戦から引き揚げに至る日々を少年・少女の目で見た記憶を描き出した画文集。その悲惨な体験の中から、逆に赤塚の「これでいいのだ」という柔軟で不屈の精神が育まれたことなど、人間の生命力が逆境において横溢することにも感動する。
17.
収容所から来た遺書

収容所から来た遺書

辺見じゅん / 文藝春秋
1992/06出版
ISBN : 9784167342036
297p 16X11cm
¥530(税込)
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60万人にも及ぶ不法なシベリヤ抑留。そこは戦場とはまた異なった意味で生死の境が、どちらに転ぶかわからない修羅場でもあった。その中で人々は落命を強いられる不条理に抗いつつ、ダモイ(帰国)だけを希望に生きた。しかし、7万人に近い人が異国の土となった。その中の一人の遺書を送り届けることで戦後を生きた人たちの足跡を辿ることによって、戦争と戦後処理の「無情」と収容所で奪われた生の証を忘れまいとする人たちの「有情」を伝えている。
18.
香月泰男一瞬一生の画業

香月泰男一瞬一生の画業

香月婦美子 / 小学館
2004/03出版
ISBN : 9784096070185
127p 25cm
¥1,995(税込)
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シベリヤ抑留から帰って、多くの人々がその体験や記憶を絵画に描いてきた。抑留者は過酷な記憶だけしか持ち帰れなかったからである。その中で「一瞬に一生をかけることがある。一生が一瞬に思える時があるだろう」と書いた香月は、その一瞬の意味を一生の時間をかけて可視化していったが、それを可能としたのは妻・婦美子さんや家族の情愛と故郷の風土であったことが胸に迫る。宮崎静夫『絵を描く俘虜』(石風社)も忘れられない一冊。
19.
戦場

戦場 二人のピュリツァ−賞カメラマン

沢田教一 / 共同通信社
2002/03出版
ISBN : 9784764105041
171p 28cm
¥2,100(税込)
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私たちが戦争の恐怖を「実感」し、戦争を否定するのは、戦争の全貌を知ることにおいてではない。一枚の写真が、人々に戦争への疑問と怒りを噴き出させることを私たちはベトナム戦争で知った。その写真の威力を知らしめたのが、澤田教一であり、酒井淑夫であり、一ノ瀬泰造らであった。その命をかけた営みが今の私たちに何を伝えるのか、頁を開いて静かに直視していきたい。
20.
わが夫、還らず

わが夫、還らず ベトナム戦争に消えたジャ−ナリストの妻たちの30年

殿島三紀 / 砂書房
2000/05出版
ISBN : 9784915818769
250p 20cm
¥1,575(税込)
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ベトナム戦争は一面で報道の戦争でもあり、取材したジャーナリストは三千名を越え、日本人スチールカメラマンだけでも約五十名が戦場に立った。しかし、そこから帰って来ない人も少なくなかった。なぜ、ジャーナリストやカメラマンは死を賭して戦場に行き、死ななければならなかったのか、遺された妻や子にとって戦争とは、戦争における報道とは何だったのか、30年の歳月のなかで改めて問い直す家族の譜。戦場は茶の間につながっていたのである。
21.
イラク米軍脱走兵、真実の告発

イラク米軍脱走兵、真実の告発

ジョシュア・キ− / 合同出版
2008/09出版
ISBN : 9784772604239
253p 20cm
¥1,680(税込)
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ベトナム戦争では多くの帰還兵士が心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩み、家庭内暴力などを生んだ。そして今、アフガニスタンやイラクで参戦した兵士たちが精神的障害を強いられている。本書によって、「民主主義のための戦い」のはずの戦争が、「貧困徴兵制」によって入隊を余儀なくされた兵士がいかに殺人マシーンに変えられ、非人間的な行為を良心の呵責なくおこなわれるようになるのか、そこから自らの人間としての尊厳を取り戻すために、どれほどの国家や社会の圧力と戦わなければならないか、を知ることができる。
22.
たたかう!ジャ−ナリスト宣言

たたかう!ジャ−ナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争

志葉玲 / 社会批評社
2007/06出版
ISBN : 9784916117748
251p 19cm
¥1,890(税込)
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戦争請負会社など急速に資本主義的に運営されていく現代の戦争や紛争において、企業としてのマス・メディアには様々な制約が覆い被さり、真実から遠ざけられていることさえ気づかない状況になってきている。それゆえにこそ、フリーランスのジャーナリストの存在意義は日々に高まりつつあるが、それを好まない政府は「自己責任」論を掲げて、圧殺に向かう。イラク、アチェ、レバノンと紛争地で取材し、アメリカ軍に拘束されたこともある著者が、敢えて「たたかう」ことを宣言する意気ごみに、唯々こうべを垂れ、活躍を祈るしかない。
23.
新聞と戦争

新聞と戦争

朝日新聞社 / 朝日新聞出版
2008/06出版
ISBN : 9784022504425
580, 20cm
¥2,415(税込)
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新聞は権力を規制する第4の権力としての任務と社会の木鐸として国民世論を形成する職責を負っていたはずである。しかし、なぜ、新聞はその本来の任務を果たさず、戦争煽動の機関と化したのか、自らの過去を直視するという、当然に行われるべくして看過されてきたことへの自省のうえに、その報道の時点に立ち帰って検証した自己点検の書。過去に目をつむっても過去は消え去ることはなく、過去に目を向けることで現在と明日の立ち位置が見えてくる。
24.
戦争責任論

戦争責任論 現代史からの問い

荒井信一 / 岩波書店
2005/06出版
ISBN : 9784006001469
330, 15cm
¥1,260(税込)
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第一次大戦後に初めて提起された戦争責任論は、戦争違法化の流れとともに人々の戦争観に転換をもたらすはずであった。しかし、日本の指導者層にとっては、それが強く意識されることはなかった。そのことが昭和期の戦争を日本人が19世紀の観念で対処した大きな要因になったのではないか、という問いをもって書かれた本書は、ほとんどの日本人にとって意識されることの少ない第一次世界大戦の歴史的意味に目を向けさせてくれる。
25.
キムはなぜ裁かれたのか

キムはなぜ裁かれたのか 朝鮮人BC級戦犯の軌跡

内海愛子 / 朝日新聞出版
2008/10出版
ISBN : 9784022599483
382p 19cm
¥1,575(税込)
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日本の戦争は日本人のみによって遂行されたわけではなく、植民地の人々も軍人・軍属として、また慰安婦として動員された。そして、捕虜虐待の罪を科せられた旧植民地の人々は、戦後もかつて日本人であったがゆえに罪に問われ、他方、もはや日本人でないがゆえに補償の対象として認められることはなかった。BC級戦犯において加害と被害の双面性が交錯するのなかに、植民地と戦争の「二重のくびき」を負った朝鮮人軍属たちの宿業が描き出されている。
26.
検証戦争責任

検証戦争責任 上

読売新聞社 / 中央公論新社
2009/06出版
ISBN : 9784122051614
280p 15cm
¥599(税込)
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混乱をきわめる靖国問題の根源には、日本人自身がA級戦犯について検証を怠ってきたために戦争責任についての基本的な認識をもてないことがあるのではないか、という視点から満州事変以後の日本の歩みを再検証し、責任を総括している。ここからは、史実に忠実であれば歴史観の如何に拘わらず、一定の結論が導き出されることが確認される。ただ、最終的には一部の軍部や政治家の責任だけを問う、という結論になってしまっていることについては異論もありうるだろう。
27.
検証戦争責任

検証戦争責任 下

読売新聞社 / 中央公論新社
2009/07出版
ISBN : 9784122051775
334p 15cm
¥660(税込)
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28.
朝日新聞の秘蔵写真が語る戦争

朝日新聞の秘蔵写真が語る戦争

朝日新聞社 / 朝日新聞出版
2009/04出版
ISBN : 9784023304222
222p 26cm
¥1,890(税込)
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朝日新聞大阪本社に眠っていた7万点の写真や読者から提供された写真のなかから厳選された写真が撮られた現場を記者が再訪し、そこに隠されていた真実や秘話を発掘することによって過去と現在とを合わせ鏡のなかに読み解こうとする試みの集成。張作霖爆殺直後のスクープ写真や検閲によって掲載不許可となった写真、そして植民地や戦場の日常的な風景などからは、写真がもつ一瞬を永久に変える威力と魅力、そして人を惑わせる魔力の意味が伝わってくる。
29.
レンズに映った昭和

レンズに映った昭和

江成常夫 / 集英社
2005/04出版
ISBN : 9784087202885
222p 18cm
¥714(税込)
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フリーのカメラマンとして、戦争花嫁や中国に取り残された戦争孤児、ヒロシマのヒバクシャなどの忘れてはならない過去や忘却を強いられている戦後などを対象に、大病と闘うなかでもレンズの向こうにある被写体との対話を絶やさなかった人の歩みの記録。この驚異的なまでに持続する意志の底には、終わりなき「負の昭和」と対峙しつづけることだけが、昭和という時代に生をうけた写真家の天命であるとの揺るぎなき確信と強靱なプロ意識が息づいている。
30.
戦争の記憶を歩く東南アジアのいま

戦争の記憶を歩く東南アジアのいま

早瀬晋三 / 岩波書店
2007/03出版
ISBN : 9784000236676
216p 20cm
¥2,415(税込)
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東南アジア歴史研究の最前線を疾走している著者が、今に遺る過去の記憶や戦跡そして新たに建てられた記念碑や博物館などの実態を自らの足と目で確認するために続けた旅の丹念な報告書。この空間と時間と共に越えて旅する視線は、フィールドワークによって鍛えられ、現実への旺盛な関心に裏打ちされている。東南アジアでは日本の戦争のことなど忘れているといった言説が、何ら根拠のない、ためにする議論にすぎないことを本書は何よりも如実に示している。
31.
戦争を論ずる

戦争を論ずる 正戦のモラル・リアリティ

マイケル・ウォ−ザ− / 風行社
2008/04出版
ISBN : 9784938662820
297, 20cm
¥2,940(税込)
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著者は、大量虐殺や暴虐な専制者や核兵器の拡散などによって蝕まれた世界において武力行使をいかなる場合においても拒絶することは、不正への降伏であると説く。その意味で絶対的非戦論に反対するが、そうした立場に立つからこそ、あらゆる戦争を同列に扱うのではなく、一つ一つの戦争行為の根拠と意味を厳密に問い詰めていくことを自らに課す。筆者の議論に賛成するか反対するか、それを自問自答していくことで私達の戦争観も鍛えられていくはずである。
32.
平和と戦争の絵本

平和と戦争の絵本 4

石山久男 / 大月書店
2003/02出版
ISBN : 9784272404742
37p 21X22cm
¥1,890(税込)
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簡潔な叙述と絵によって平和と戦争の意味をやさしく問いかけるこの絵本シリーズは、子どもだけでなく大人にとっても貴重な知識を与えてくれる。この非暴力で平和を訴えた人々のなかに女性が多く取り上げられていることは類書にない、このシリーズの視点の特徴を示している。巻末の参考文献から読書を発展させていくことで、視圏は大きく広がっていくだろう。絵本は子どもの時に読むものとして遠ざけることは、自らの可能性を閉ざすことになる。
33.
地球憲法第九条

地球憲法第九条 対訳

チャ−ルズ・M.オ−バビ− / たちばな出版
2005/07出版
ISBN : 9784813318859
48,2 21cm
¥2,100(税込)
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憲法9条については、ハーグ平和会議百周年の市民集会や2008年の幕張における「9条世界会議」などで世界的に普及させようとする気運が高まっているが、国外から憲法9条に注目し、アメリカで「第9条の会(A9S)」を発足させて、その意義を訴えてきた先駆者による論集。単なる擁護論ではなく、日本が「良心的参戦拒否国家」として世界に貢献していくあり方を、具体的事例を挙げながら提唱している。
34.
グロ−バリゼ−ションと人間の安全保障

グロ−バリゼ−ションと人間の安全保障

アマルティア・セン / 日本経団連出版
2009/02出版
ISBN : 9784818528406
160p 20cm
¥1,890(税込)
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平和的生存権を前文に掲げた日本国憲法は、全世界の人々が「ひとしく恐怖と欠乏から免れ」ることを目標に掲げている。そして、平和とは単に戦争がない状態というだけでなく、すべての人々が自らの生存と尊厳を確実に手にすることによって達成されると説く人間の安全保障論は、日本が国連において賛同した議論でもあった。それをいかに実現していくのか、経済学者センの冷静な議論に耳を傾けたい。目標のないところには希望も方策も生まれない。
35.
世界政治

世界政治 進歩と限界

ジェ−ムズ・メイヨ−ル / 勁草書房
2009/03出版
ISBN : 9784326351459
240p 20cm
¥2,625(税込)
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戦争がもう一つの手段をもってする政治であるとするならば、世界政治を動かしている民主主義やナショナリズムなどの要因や、主権と国際法などのシステムがいかなる変容を遂げてきているのかを知ることが不可欠となる。本書は、ゲーム論などによらずに、深い古典的教養を基盤にした人間観察と国際政治史の蘊蓄をもとに世界政治の流れを示して含蓄に富む。また、訳者による国際政治に関する文献案内も有益である。
36.
日露戦争の世紀

日露戦争の世紀 連鎖視点から見る日本と世界

山室信一 / 岩波書店
2005/07出版
ISBN : 9784004309581
249, 18cm
¥819(税込)
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最後に拙著で恐縮ながら、日本の近現代史は世界との繋がりのなかでしか理解することはできないという意味での連鎖視点を提起し、その適用を試みた新書を挙げさせて戴く。もちろん、ある視点を提示することは、逆にそこから排除してしまう領域を生むことになるが、東アジア的な冊封・朝貢体制と国際法体系との相克のなかで生じた戦争とそれに対抗する思索と運動のなかで発せられた非戦論の連鎖の意味について考えて戴くための一助となれば幸いである。

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