鈴木忠志さんエッセイ 「演劇への道、演劇からの道」 どんな本でも言葉でも演劇にできるというのは、長年の私の信念である。つまり、どんな本からでも演劇を読みとることができるし、また、どんな本の言葉も舞台上で俳優が語るセリフにすることができるということである。とはいっても、質的な水準ということはある。どんな演劇をつくろうとしているかによって、そのつど役に立つ本や言葉というのは限定されてくる。漫画、詩、新聞記事、小説、戯曲、思想論文から法律まで、書物にも言葉にもいろいろな世界があるが、すべて舞台で語られるセリフにできないことはない。問題は観客の意識をどの方面に集中させるかである。それによって選択される本も言葉も違ってくる。 実際のところ、私はこれまで、戯曲だけの言葉で舞台をつくってきたことはなく、多様な書物や文献から引用した言葉で舞台を構成してきた。そして、世間一般から私は演出家だとみなされてきた。その演出家としての私の精神状態を刺激し、活性化してくれた言葉たちも多様である。私の演劇観、ということは芸術や社会に対する見方ということだが、それがはっきりと形をなしたのは20代前半から30代後半ぐらいまでの頃である。今は昔のことだが、その頃の私にとって、演劇書だったいくつかの本をここに列記してみた。これは鈴木忠志という演劇精神の若い頃の構成台本とでもいうべきか。
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